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古文の補助動詞完全攻略!本動詞の見分け方と敬語の訳し方をプロが解説

小池 玲 小池 玲 • 更新: • 公開: • 読了約 14 分
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古文読解において多くの受験生がつまずきやすい最大の関門が「補助動詞」の扱いです。特に共通テストや難関大の入試問題では、補助動詞を単なる添え字のように読み飛ばしたり、本動詞と混同したりすることで主語を見失い、致命的な失点につながるケースが後を絶ちません。

しかし、直前の接続ルールと敬語の種類、そして「敬意の方向」を正しく捉えられるようになれば、複雑に入り組んだ登場人物の関係性が一気にクリアになります。本稿では、本動詞との決定的な見分け方から頻出敬語の訳し分け、即効性のある練習問題まで、古文の得点力を引き上げる必須ポイントを体系的に解説します。

【基本ルール】古文における補助動詞とは?本動詞との決定的な見分け方

古文補助動詞

古文の動詞には、それ単体で動作や状態を表す本動詞(完全動詞)と、他の動詞の下について特定の意味や敬意を添える補助動詞の2種類が存在します。

文章の骨格を正確に捉えるためには、まず両者を瞬時に見分ける「接続のルール」を身体に染み込ませる必要があります。見分け方の原則は極めてシンプルです。

直前に「動詞の連用形」または「接続助詞(て・して・で)」がある場合、その動詞は原則として補助動詞として機能しています。一方で、直前に名詞(体言)や格助詞(を・に・へ・より・から等)が置かれている場合は、その動詞自体が意味を持つ本動詞です。

例文でその差を比較してみます。

【本動詞の例】
「薬の壺奉る。」(竹取物語)
直前が「壺(名詞)」であるため、この「奉る」は本動詞であり、「(薬の壺を)差し上げる」と訳します。

【補助動詞の例】
「かの国の車待ち奉り給へ。」(竹取物語)
直前が動詞「待つ」の連用形「待ち」であるため、「奉り」は補助動詞となり、「お〜申し上げる(お待ち申し上げなさってください)」という謙譲の意味を添えています。

多くの受験生が読解で時間を浪費してしまうのは、すべての動詞を本動詞の感覚で単語訳しようとするからです。補助動詞は「直前の動作を修飾するパーツ」に過ぎないと見抜くだけで、文の主幹(誰が何をしたか)を掴むスピードが倍増します。

【敬語の種類別】頻出する補助動詞の意味と敬意の方向を完全整理

古文に登場する補助動詞の大半は「敬語動詞」です。敬語補助動詞を制する鍵は、「敬語の種類」と「敬意の方向(誰から誰への敬意か)」を機械的に処理できるように整理しておくことにあります。

敬語補助動詞は、大きく以下の3カテゴリーに分類されます。

1. 尊敬の補助動詞(〜なさる、お〜になる)
動作の主体(主語)を高める働きをします。話し手(地の文では筆者)から「動作の主語」へと敬意が向かいます。
代表例:「給ふ」「おはす」「おはします」「まします」「おぼす」

2. 謙譲の補助動詞(〜申し上げる、お〜する)
動作の受け手(客体・相手)を高める働きをします。話し手(地の文では筆者)から「動作の対象(〜に・〜へ)」へと敬意が向かいます。
代表例:「奉る」「申す」「聞こゆ」「聞こえさす」「参らす」

3. 丁寧の補助動詞(〜です、〜ます、〜ございます)
聞き手や読者に対して敬意を払います。会話文では「話し手から聞き手へ」、地の文では「筆者から読者へ」敬意が向かいます。
代表例:「侍り」「候ふ」

古文では主語が頻繁に省略されますが、動詞の後ろに付く補助動詞が「尊敬」であれば身分の高い人物の動作であり、「謙譲」であれば身分の高い人物に対する動作であることが確定します。つまり、補助動詞は「主語を特定するためのレーダー」として機能します。

【頻出動詞を攻略】「給ふ」「奉る」「侍り・候ふ」の訳し方と使い分け

入試や定期試験で最も出題頻度が高く、受験生が混乱しやすい代表的な敬語補助動詞の訳し分けを深掘りします。

①「給ふ(たまふ)」の訳し方と落とし穴
「給ふ」は通常、四段活用で「〜なさる・お〜になる」と尊敬を表します。しかし、会話文・手紙文の中で使われる「下二段活用の給ふ(給へ/給へ/給ふ/給ふる/給ふれ/給へよ)」は例外で、謙譲の補助動詞「〜ます・〜ていただきます・〜させてください」の意味になります。

直前に「思ひ」「見」「聞き」「知り」などの心話動詞・知覚動詞を伴い、「思ひ給ふ(思いましてございます)」「見給へ(ご覧ください/見まして)」の形で頻出するため、会話文内の下二段「給ふ」は見落とし厳禁の頻出ポイントです。

②「奉る(たてまつる)」の意味と多機能性
補助動詞としての「奉る」は謙譲語で「〜申し上げる」と訳します(例:「書き奉る」=お書き申し上げる)。
注意すべきは本動詞との識別です。「奉る」が本動詞として使われる場合、「差し上げる(謙譲)」のほか、貴族の行為を表す「召し上がる・お召しになる・お乗りになる(尊敬)」という正反対の敬語になるケースがあります。直前の語を観察し、動詞連用形がなければ文脈に応じた本動詞訳を適用します。

③「侍り(はべり)」「候ふ(さぶらふ/さうらふ)」の違い
どちらも丁寧の補助動詞として「〜です・〜ます・〜ございます」と訳しますが、使われる時代背景と文体に特徴があります。

「侍り」は平安時代の貴族社会を描いた雅な作品(『源氏物語』『枕草子』など)の会話文で多用されます。
一方の「候ふ」は、平安末期から鎌倉・室町時代の武家社会を背景とした軍記物語(『平家物語』など)や中世の書簡・能楽作品で多用されます。基本的な文法機能は同一であるため、どちらも「聞き手への丁寧」としてシンプルに処理して問題ありません。

【一覧表で確認】古文の主要補助動詞の活用表と接続のルール

主要な補助動詞の文法情報を体系的に整理しました。読解中に迷った際の早見表として活用してください。

補助動詞 活用の種類 敬語の種類 基本の訳し方 接続と識別ポイント
給ふ(四段) 四段活用(ま・み・む・む・め・め) 尊敬語 〜なさる、お〜になる 連用形接続。主語が高貴な人物。
給ふ(下二段) 下二段活用(め・め・む・むる・むれ・めよ) 謙譲語 〜ます、〜させていただく 会話・手紙文限定。「思ふ・見る・聞く・知る」の連用形に接続。
奉る 四段活用(ら・り・る・る・れ・れ) 謙譲語 〜申し上げる 連用形接続。動作の受け手が高貴な人物。
侍り ラ変活用(ら・り・り・る・れ・れ) 丁寧語 〜です、〜ます、〜ございます 連用形・接続助詞「て」に接続。平安文学の会話に頻出。
候ふ ハ行四段(は・ひ・ふ・ふ・へ・へ) 丁寧語 〜です、〜ます、〜ございます 連用形・接続助詞「て」に接続。中世文学や候文に頻出。
おはす サ変活用(せ・し・す・する・すれ・せよ) 尊敬語 〜ていらっしゃる、お〜になる 連用形や「て」に接続。「あり・をり・行く・来」の代用。
参らす 下二段活用(せ・せ・す・する・すれ・せよ) 謙譲語 〜申し上げる 連用形接続。「奉る」よりも一段強い敬意を含む。

さらに見逃せないのが、天皇や皇族など最高権力者に対して用いられる「最高敬語(二重敬語)」の構造です。

「使役・尊敬の助動詞(す/さす)」+「尊敬の補助動詞(給ふ)」が合体した「せ給ふ」「させ給ふ」の形が代表格です。直前に使役の対象(誰かに〜させる)が存在しない文脈であれば、100%最高敬語であり、「(帝や中宮が)〜あそばす、〜なさる」と訳します。この形を見つけた瞬間、主語が帝・院・東宮・中宮などの最高身分者に絞り込まれます。

【共通テスト対策】読解スピードと得点力が劇的に変わる補助動詞の活用術

共通テストの古文は、限られた試験時間(約20分)の中で長文の文脈と心情を正確に把握しなければなりません。本文を一字一句現代語訳していては時間が足りなくなります。

そこで真価を発揮するのが「補助動詞のフィルタリング読解法」です。

古文の文章構造は、補助動詞に注目するだけで次のように単純化できます。

ステップ1:述語末尾の補助動詞に印をつける
動詞の後ろに「給ふ」「おはす」があれば【↑(上向きの矢印=主語が偉い)】、「奉る」「聞こゆ」があれば【↓(下向きの矢印=目的語が偉い)】、「侍り」「候ふ」があれば【会話・丁寧】とマークします。

ステップ2:敬意のベクトルから主語と相手を復元する
例えば「案内を言ひ入れ奉りて、門の外に待ち給ふ」という一文があれば、前半は「言ひ入れ申し上げて(案内を請う相手=高貴な人物)」、後半は「お待ちになっていらっしゃる(待っている主語=身分の高い人物)」と瞬時に判定できます。

共通テストの選択肢には、「誰が誰に対して行った行為か」を取り違えたダミー選択肢が必ず用意されています。補助動詞の敬意の向きを正確にトレースできれば、本文を完全に訳し切れていなくても、誤答選択肢を瞬時に消去することが可能です。

【実戦力チェック】古文の補助動詞・識別練習問題と詳しい現代語訳・解説

知識の定着を確認するために、頻出パターンを凝縮した練習問題に挑戦してみましょう。

【問題1:本動詞と補助動詞の識別】
次の傍線部(ア)・(イ)の「奉る」の文法的な種類(本動詞か補助動詞か)と、ここでの意味を答えよ。
(ア)「宮に御文を奉る。」
(イ)「僧ども、経を読み奉る。」

【解説1】
(ア)直前が名詞+格助詞「御文を」であるため、独立した本動詞です。意味は謙譲語で「(手紙を)差し上げる」となります。
(イ)直前が動詞「読む」の連用形「読み」であるため、後ろから意味を添える補助動詞です。意味は謙譲語で「お〜申し上げる(お読み申し上げる)」となります。

【問題2:敬意の方向と最高敬語】
次の文の傍線部「仰せられ給ふ」における敬語の種類と、敬意の対象(誰を高めているか)を答えよ。
「帝、大臣に『はや参れ』と仰せられ給ふ。」

【解説2】
「仰せらる」は「言ふ」の尊敬語であり、さらに尊敬の補助動詞「給ふ」が重なっています。これは尊敬の助動詞「らる」+「給ふ」による最高敬語(尊敬の二重敬語)です。
敬語の種類は尊敬語であり、敬意の対象は動作の主体である「帝(話し手/筆者から帝への敬意)」となります。

【問題3:下二段活用「給ふ」の識別】
次の会話文中の傍線部「見給へ」の活用形と意味を答えよ。
「『この絵をいとあはれと見給へて、持ちて参りつ』と語る。」

【解説3】
直後の接続が接続助詞「て」であるため連用形です。四段活用の「給ふ」であれば連用形は「見給ひて」となるはずですが、ここでは「見給へて」とエ段の形になっています。
したがってこれは下二段活用「給ふ」の連用形であり、会話文中で話者が自身の動作(絵を見たこと)をへりくだって述べる謙譲の補助動詞です。意味は「〜まして(見まして)」となります。

【古文 補助動詞】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:補助動詞と本動詞の識別が入試で頻繁に問われるのはなぜですか?
A1:古文は主語の省略が非常に多い言語です。動詞が補助動詞なのか本動詞なのかを正しく識別できないと、「誰が誰に何をしたのか」という文脈構造そのものを取り違えてしまうためです。出題者は受験生の正確な読解構文力を測定するために、識別問題を好んで出題します。

Q2:下二段活用の「給ふ」はどのような場面で見分ければよいですか?
A2:条件は3つあります。①「会話文または手紙文中であること」、②「一人称(私)の動作について述べていること」、③「思ふ・見る・聞く・知るなどの動詞に接続してエ段(給へ)の形をとっていること」です。この3点が揃っていれば、下二段活用(謙譲補助動詞)と判断できます。

Q3:敬語以外の補助動詞にはどのようなものがありますか?
A3:敬語以外の主要な補助動詞には、「〜し続ける」を表す「あり・をり・過ぐ」、「すっかり〜してしまう」を表す「果つ」、「〜し始める」を表す「初む(そむ)」などがあります。これらも動詞の連用形に接続して動作の様態や時間的経過を表す重要な働きを持っています。

古文の補助動詞は、一見すると無機質な文法知識のように感じられる可能性があります。しかしその本質は、省略された主語や複雑な人間関係を解き明かすための「読解のナビゲーションシステム」です。

直前の接続で本動詞と補助動詞を切り分け、敬語の種類から敬意の方向を割り出す訓練を繰り返すことで、古文を読むスピードと正確性は劇的に向上します。基礎的な活用表と頻出動詞の識別パターンを完璧に整理し、得点源へと変えていきましょう。

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校閲歴9年。人名・役名・公開日の表記ゆれを統一し、数字は必ず一次資料で裏を取ります。

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